最近のアナーキズム周りについて


最近書店を歩くと、チョムスキーやグレーバーのアナーキズム論の翻訳が並んでいたり、「新しいアナキズム」が云々などという本まで売られていたりします。

チョムスキーの「アナキズム論」

チョムスキーの「アナキズム論」

資本主義後の世界のために (新しいアナーキズムの視座)

資本主義後の世界のために (新しいアナーキズムの視座)

新しいアナキズムの系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)

新しいアナキズムの系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)

何年も前からアナーキズムへの関心は徐々に高まりつつあったのですが、どうもその勢いが加速しつつあるような気がします。クロポトキン『相互扶助論』の新版が出ているのを見つけた時は、思わず「マジかよ」という言葉が口を突いていました。なぜ今更(今時)?。

新版 相互扶助論

新版 相互扶助論

何かこの頃のこういった動きを見ていると、あれですね。多少なりともアナーキズムについて学んだことのある身としては、あれです。

最近のアナーキズム復興/見直しの(日本での)中心的な担い手になっている雑誌『現代思想』周辺の人々には大学やゼミの先輩が多いので、あまり直截な物言いははばかられるのですが、要するに、気持ち悪いです。

何でしょう、調子に乗っているのですかね。もし、そうだとすれば、その勢いを利用してリバタリアニズムの向こうを張るぐらいラディカルで濃密な議論を展開して欲しいです。無理ならはしゃがないで頂きたい。

挙げたような本は書店でパラパラめくる程度にしか見ていませんが、現代のアナーキズムに期待するようなことは何も無いと思います。ネグりの何が評価されているのか、私には解りません。『マルチチュード』は輪読で眺めましたが、他は読んでいません。それで特に問題もありません。

アナーキズムに何かを期待するなら、古典や思想史的研究を読むべきです。幸いなことに現下の流れに乗ってか、プルードン選集が文庫化されました。クロポトキンプルードンなら、読んで損はしないんじゃないですかね(あと最近フーリエ研究も出版されていましたね)。

プルードン・セレクション (平凡社ライブラリー)

プルードン・セレクション (平凡社ライブラリー)

アナーキズムの歴史を学ぶなら、とりあえずスタンダードなところとしてアルヴォン→ウドコックと読んで、気になった思想家や運動家へと進めばよいと思います。

アナーキズム (文庫クセジュ 520)

アナーキズム (文庫クセジュ 520)

アナキズム〈1〉思想篇

アナキズム〈1〉思想篇

アナキズム〈2〉運動篇

アナキズム〈2〉運動篇

まぁ別にそこまで真剣な興味があるわけではないよ、という方は浅羽から入って、少し詳しく知りたいことがあればFAQ(『読本』)を引いてみればいいでしょう。浅羽の本は実際のアナーキズム周りの人には評判が良くないですが、手軽に読めてそれなりに面白いので、興味本位の人が最初に読むのには丁度良いです。あとはネットで検索すれば色々出てきますから、それで十分ではないかな。

アナーキズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)

アナーキズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)

アナキズム読本―アナキズムとは何か?

アナキズム読本―アナキズムとは何か?

私もその内、改めてアナーキズムを勉強し直してみようとは思っていますが、それまでに場が荒らされて変な空気になってなきゃいいなぁ。

まぁ、そうなっても粛々と自分のやりたいようにやるだけですが。