政治資金関連制度について


小沢事件があり、どう考えたらよいかということで勉強しなければと思い、とりあえずウェブで読める論文を物色中。その中から、とりあえず以下を備忘に録しておく。


北野弘久「政治献金の課税と国民の参政権」『早稲田法学』第55巻第1号、1980年3月


著者は租税法学の重鎮*1。非常に勉強になり、かつ興味深い。

……のは当然のこととして、しかし著者のように人民主権論を採りながら企業献金の禁止を唱える立場は、かなり無理があるように思える。外国人参政権の問題も関連するのだが、敢えて意地悪く言うと何か人民主権論の見映えのいいところばかりがつまみ食いされているような印象。より体系的な整理によって選択肢のメリット・デメリットを明確に示す必要がある。

その他に、企業と労働組合を区別する仕方にも違和を覚えた。また、政治献金関連の法制度について考えるとしても、議論が公法的な視点に限定されるべき理由は無いはずだろうとも感じた。もちろん企業の権利能力の問題は商法上の論点ではあるが、それが議論される際の論拠が何とも公共的な性質のそれに偏っており、個々の権利主体の目的意識に即すような議論を不可能にする不均衡が生じているように見える。もっとも約30年前の論文であることを考慮する必要はある・が、その後の議論の展開もあまり変わり映えがしていないのではないかなと個人的には推測している。

道路財源の問題もそうだが、金の動きと各政治主体の権利・権力の関連はデモクラシー論における極めて重要な論点。なのだが、その割にデモクラシー論を専門とする人の進攻が手薄な印象を受ける。それもあって、個人的にはこの辺りを攻めて何か面白いこと書けないかなーと思っているものの、なかなか勉強が追い付かないのだよな。そういうわけで、とりあえずメモだけしておくのこと。

  • 参考

*1:岩波新書の『納税者の権利』は財政民主主義について思考する際に必読の名著。

納税者の権利 (岩波新書)

納税者の権利 (岩波新書)