2009-01-01から1年間の記事一覧

2009年にしたこと&滝口清栄『マックス・シュティルナーとヘーゲル左派』

昨年末は一応「2008年の3冊」を選んだわけですが、今年はそもそも本を読めていないので、まぁ無理です。代わりに、今年一年で何が出来たんだろうな、ということを書き留めておきます。 このブログも来年の2月で丸5年を数えることになるわけですが、今年はこ…

政治学のたそがれ?

最近は本を読む機会が減ってネットばかり見ているが、そうすると、この国には政治学者がいないのだろうか、という気になってくる。ネットで目立つのは経済学や社会学、哲学の研究者や批評家・運動家ばかりで、政治学関係の研究者は一様に慎ましい。多少なり…

「セックスの社会化」は可能か?

前エントリに対する反応は、目に入る範囲では相対的に批判的なものが多いかな。ブックマークでのコメントにお答えすることは普段無いんですが、「批判を歓迎する」とわざわざ書いたことだし、たまにはやってみましょうか。

セックスは自己責任でよいのか――性のケイパビリティとセックスワークの原則自由化を考える

このブログでセクシュアリティの問題を扱ったことは、あまりない。採り上げるほどの興味を持っていないということもあるが、セクシュアリティについて語ると、多かれ少なかれ個人的経験と結び付けて考えざるを得ない部分が必然的に出てくるので、ややためら…

stakeholder democracyへの道半ば

最近はインプットが僅少なので、まとまったエントリは書けずにいる。近頃考えることについて、ごく散漫な話をしてお茶を濁そう。先頃書いた東浩紀的な「民主主義2.0」の解説としては、「「一般意思2.0」の勘所、あるいは「データベース民主主義」の理論的位…

羽入辰郎『支配と服従の倫理学』

支配と服従の倫理学作者: 羽入辰郎出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2009/03/01メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 143回この商品を含むブログ (9件) を見る 久し振りに大きめの書店をうろつくことができて書棚を物色していると、この本を見つけた…

カテゴリ整理

定期点検を兼ねて、カテゴリの改編と過去エントリのカテゴリ変更を行いました。昔の記事を眺めながら思ったのは、amazonの写真データがだいぶ増強されているなー、ということ。やっぱ視覚イメージがあると本がぐっと身近に感じられますから、これは重要です…

哲学的想像力と政治学的想像力

東浩紀の議論に絡めて色々書き散らしてきたので、この辺りで一旦整理。国家や民主主義などに直接かかわるものだけ、まとめておく。時系列にする意味はあんまり無いと思うので、改めて載せておきたいところを拾いながら(注は省略)、その結び付きで並べてい…

"the veil martyr"

以前採り上げたことの責任感で、「ドレスデン法廷でのムスリム女性刺殺事件」についての続報記事リンクを二つほど貼っておきます。いずれも10月26日付の、アルジャジーラと独シュピーゲル誌の英語サイトから。 German on trial over Muslim murder Man Stand…

「一般意思2.0」の勘所、あるいは「データベース民主主義」の理論的位置

私の論文などに興味がある人はごく少数でしょうから、ブログマターに戻って先日の話を続けましょう。デモクラシーについての私の理論的立場は既にお話したので、今回は東的デモクラシー論が持つ可能的意味にグッと焦点を絞りたいと思います。東さんは「朝生…

自由の終焉

ここ最近はデモクラシー関連の記事を続けているが、そろそろ別の話題もどうだろうか。というわけで本日、HPに「自由の終焉――「配慮」による内破と自己性への転回――」と題する論文をアップした。これは(記憶が定かではないので)たぶん昨年末から今年の初め…

ポストモダンが要請する新たな政治パラダイム――Stakeholder Democracyという解

私はリアルタイムで見ていたのですが、昨日の『朝まで生テレビ』に出演した東浩紀さんが、「インターネットがある現代なら、5〜10万人の規模でも直接民主政が可能だ」と力強く語っていました。この発言は、これまで彼が展開してきた一連の議論の延長線上にあ…

政治的敗者は政策過程から退出すべきか――山口二郎論説に寄せて

今週の『週刊東洋経済』(2009年10月24日号(第6229号))に、山口二郎のコラム「党派性を出すことで言論者の責任も明確に」が掲載されている。同記事には社会科学と現実とのかかわりについての山口の認識が顕著に現れているので、多少詳しく採り上げたい。…

吉田徹『二大政党制批判論』

二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ (光文社新書)作者: 吉田徹出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/10/16メディア: 新書購入: 2人 クリック: 54回この商品を含むブログ (31件) を見る 著者の専門はフランス政治。1989年以降の現代日本政治史の歩…

当事者と利害関係者の違い

「当事者と利害関係者」@Soul for Sale PhaseⅡ、より。 ステイクホルダーという概念が社会問題の中で有効に機能するのは、これまで発言を認められてこなかった人々を「当事者」として当該の出来事の中に巻き込んでいくときだ。それは会社経営に権利を持つ、…

暴力の定義について

http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20091008/p1 「文化的暴力」というのは概念的には半端で、無くてもいいものだと思う。政治的には重要なんだろうが。それにしても、「暴力」の語に反発を覚える人は多い。以下はまず、ご参考までに。 「暴力とは何か」(2008…

『ONE PIECE』における正義と信念の問題

宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(早川書房、2008年)を読んで私が感じた最大の不満は、同著が90年代後半以降のサブカルチャー作品を多数採り上げ、漫画『DEATH NOTE』を新時代の「決断主義」を象徴的に描いた作品として詳しく取り扱いながら、同時期に漫画界…

数学を勉強することの意味――「1+1」の思想

勉強することの意味を尋ねられたらどう答えようかな、などとはよく考えることがあるけれども、今日は特に数学に限定して考えてみようか。先日、数学を勉強するのは論理的思考を養うためだという旨の説明を横耳で聞く機会があって、それも一つの説明だろうな…

政権交代雑感

国内外を問わず、現実政治そのものについて私がオリジナルに語れる有意義なことというのは何も無いので、語らないことにしている。例えば鳩山首相の人事は、小沢幹事長から始まって以来、まずこれ以上は考えにくい配置だと思っていたのだが、そういうことも…

一般想像力批判

自分が小難しい類の本を読むようになってからの短い年月の中でも、最近とみに「想像力」なる言葉を使いたがる論者が増えた気がする。その意味するところには差異があっても、誰もが想像力の「減退」や「枯渇」(あるいは「古さ」)を憂い、想像力の「回復」…

消費者主権政治が政府に要請する二重の課題

「小さな政府と社会保障の両立を求める変な国民」@すなふきんの雑感日記 「小さな政府と社会保障拡大を求める欺瞞」@Economics Lovers Live 「メモ:「小さな政府」、「大きな政府」、「社会保障負担/給付」に関する国民意識」@研究メモ 共通する疑問は、…

ステークホルダー民主主義の射程

濱口桂一郎『新しい労働社会』の末尾近くでは、目指すべき方向性として「ステークホルダー民主主義」への言及が見られる。まだ全体をきちんと読めていないので、書評ということではないが、これは一応私の専門に属することなので、備忘がてら思うところを書…

確率の前と後

東浩紀が福嶋亮大にインタビューを受けた「オルタナティブの思想」『批評の精神分析 東浩紀コレクションD』(講談社BOX、2007年)から(初出2006年)。 じゃあおまえはなぜ一回性とか確率とか言うんだ、というと、これはちょっと難しい話で、僕もよく言語化…

「かかわりあいの政治学」の余白に

規範とは何か。決めごと/決まりごとである。なぜ決める/決まるのか。そうした方が好都合だからだ。誰にとって?――関係する(と考えられる)全ての主体にとってである。ある規範によって不利になる人もいるではないか――無論。しかし、その人にとっても、従…

政治を巡って今読むべき10冊

http://synodos.livedoor.biz/archives/958940.html こういうのを見ると、自分でも選んでみたくなる。とりあえず、ささーっと本棚を眺めながら思い付いたところをリストアップ。古典は避け、なるたけ新しく、かつ政治との直接的な繋がりが見えやすい本を選び…

総選挙に臨む人へ

いや、驚いた。今週の『鈴木先生』(『漫画アクション』2009年9月1日号、双葉社、2009年8月18日)を読んでいたら、選挙と民主主義について相当突っ込んだ議論が展開されているではないか。あれは政治学の良い教材になりそうだ。総選挙が公示されたので、いず…

経験と継承、あるいは不継承

8月15日という日付には、何の意味も無い。ただ、何か書きたかった。多分ずっと。 「黙祷と吐き気」(2006年8月6日)「神話が暴かれた後に何をすべきか」(2006年10月29日) もう3年の間、書いていなかったのかな。いや、知っていた。確かに書かなかった。書…

ドレスデン法廷でのムスリム女性刺殺事件

以下に掲載されている、内藤正典「オバマ政権はイスラームとの衝突を緩和できるか――穏健派と過激派という二分法を超えたとき、対テロ戦争はどこへ向かうのか―― 」を大変興味深く読む。 世界 2009年 09月号 [雑誌]出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/08/0…

各党マニフェストから教育政策を比較する

8月30日の総選挙に臨む各党のマニフェストが出揃ったところで、子育て・教育・科学政策に絞って各党の公約を比較してみたい。資料は以下を用いる(いずれもYushisya.Blogから)。 「教育資料採集・特別版no.1――2009.8.30総選挙マニフェスト(1)自由民主党」 …

政治の可能性を奪う予定調和

選挙の季節は、理論と現実の関係に思いを巡らすのに格好の機会である。今日は、日経新聞の社説の一節を採り上げたい。 首相に批判的な議員の間では、党とは異なる独自の政権公約を掲げて選挙を戦おうとする動きがある。これは政権公約と党首(首相候補)を比…