吉田徹『二大政党制批判論』


二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ (光文社新書)

二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ (光文社新書)


著者の専門はフランス政治。1989年以降の現代日本政治史の歩みを辿りながら、二大政党制待望論に象徴される現代日本の「政治工学」の潮流を批判的に吟味している。本屋でささーと読んだだけなので詳しく評することはできないが、政治学のスタンダードな議論がふんだんに盛り込まれており、良書であると思う。ただ、一般向けとしては文体・内容ともにやや硬質なので、全く予備知識が無い人には少々辛いかもしれない。

不満と言うか一読して一番気になったのは、二大政党制だから新自由主義みたいな社会の構造を根本的に変えるような改革が可能になったのだ、という趣旨の記述。その捉え方は政治学的にもどうなのかなぁ。英国はまだしも米国はねぇ。まぁ、オバマがこれから証明してくれるのかな。そもそも言うまでもなく、大統領制or議院内閣制、中央と地方の関係などと切り離して政党制だけを比較して論じるのは無理のあることで、それは著者も重々承知だろう。

あと、どうせ政党制を論じるのなら、地方組織や地方政治についてももっと言及して欲しかったな。政界再編だの何だのを云々するなら先ず地方を見なければならないはずなのに、そういうレベルの議論は一般にはほとんど流通していないから。

この本を補完する意味で次に読むべきものは幾らでも有り得るけれども、とりあえず理念的な方面について新書レベルで読めるものとして以下の二冊を挙げておきたい。


近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)

近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)

国民代表の政治責任 (1977年) (岩波新書)

国民代表の政治責任 (1977年) (岩波新書)


政党その他については良い教科書がたくさんあると思うので特別挙げない。連立政治についてなら、やはり篠原一になるかな。あとはともかくレイプハルトを一回読んでおいた方が良い。


民主主義対民主主義―多数決型とコンセンサス型の36ヶ国比較研究 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)

民主主義対民主主義―多数決型とコンセンサス型の36ヶ国比較研究 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)