2008-01-01から1年間の記事一覧

2008年の3冊

年内はもう書かないと思うので、締めの挨拶を兼ねて、軽く書いておきます。今年はもうポツポツとした書評と「かかわりあい」ぐらいしか書かない予定だったのですが、事情が変わったせいで異様に精力的な更新をする局面に見舞われてしまいました。いつになっ…

かかわりあいの政治学4――連接の長さと権利的優位

(承前) ある晴れた日のこと。私は真っ直ぐな歩道を歩いている。すると、100メートルほど前の横路から出てきた中年女性が、同じ歩道を、こちらに向かって歩いて来る。私も彼女も歩道の建物側を歩いており、徐々に近づいている。私はこの道に入ってからずっ…

保守思想入門

佐伯啓思『自由と民主主義をもうやめる』幻冬舎(幻冬舎新書)、2008年 講演記録の書籍化であり、語り言葉による平易な形で佐伯思想が概観できる内容になっています。論旨にはほとんど賛成できませんが、現今、保守思想や保守主義にはろくな入門書が無いので…

トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

A.トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』(第一巻上下・第二巻上下、松本礼二訳、岩波書店(岩波文庫)、2005/2008年)は、アメリカ論として、デモクラシー論として、社会学作品として、政治学作品として、エッセイとして、眩いほどの名著です。10か月に…

アメリカたちの呪縛

少し前にアメリカ思想二冊の書評を書きましたが、その後もアメリカ縛りで以下のようなものを読んでいました。どれも良い本です。 憲法で読むアメリカ史(上) (PHP新書)作者: 阿川尚之出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2004/09/16メディア: 新書購入: 2人 ク…

倫理学の根本問題

確か修論を書き上げた後の数週間で一気に書いたのだけれど、その先がどこに向かうのか、今一つ見通しが悪い気がして寝かしておいた論文がありまして。「覚え書き」を書くことで社会学的な見通しは付けられたし、Egoist Manifestを書いて自身の暴力衝動の発露…

Egoist Manifest

時々思う。世界の全てに優しくしたい/ 私にとって必要なヒトやモノ以外は全て消え去ってしまえばいい。矛盾するような二つの思いが、同じ瞬間に顔を出す。脳内に畳み込まれている異なる想念が、交互に顔を出すのではない。穏やかな心向きによる世界の肯定と…

戦後アメリカの政治思想

仲正昌樹『集中講義!アメリカ現代思想――リベラリズムの冒険』日本放送出版協会(NHKブックス)、2008年 会田弘継『追跡・アメリカの思想家たち』新潮社(新潮選書)、2008年 米大統領選イヤーの今年はアメリカにまつわる書籍が多数刊行されたが、今回はその…

かかわりあいの政治学3――出来事が持つ意味

(承前) 個別の出来事が個別の出来事以上のものになることがある。直接には少数の人がかかわっただけの特異な出来事が、その特異性を維持したまま、その出来事が属する〈現在〉の全体を圧縮して代表することがある。日本の戦後史から例をとれば、連合赤軍事…

水村典弘『ビジネスと倫理』

水村典弘『ビジネスと倫理――ステークホルダー・マネジメントと価値創造――』文眞堂、2008年 ビジネスと倫理作者: 水村典弘出版社/メーカー: 文眞堂発売日: 2008/09/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る ご縁があって…

現代日本社会研究のための覚え書き――結論と展望

さて、ようやく一応の結論まで辿り着きました。本連載は、ひとまずこれで一区切りにします。「科学/生命」は書いていませんし、まだまだ不足なところを挙げたらきりがないですが、かろうじて大筋の見通しは付けられたと思います。元々1〜2年かけて地道にや…

現代日本社会研究のための覚え書き――ネーション/国家

今回は力作…では別にないですが、少なくともここ1〜2年の間に書き溜めたり書き散らしたりしていたことがまとめてあるので、まぁそれなりに参考にはなるのではないでしょうか。宮台や東の議論との距離を明示したということもありますが、国家については左翼周…

かかわりあいの政治学2――個体の「本質」を疑う

(承前) 前回、何が「自分のこと」であるのかは、何が自分に「関係する」のかについての意識に依存していることを述べて、いわゆる「自己決定」原理が前提としている論理を抉り出して見せた*1。今回は、その関係の主体、意識する主体について、掘り下げて考…

現代日本社会研究のための覚え書き――スピリチュアル/アイデンティティ(第3版)

16日付ですが、書いているのは12日です。既に書いた項の改訂版を一挙に載せたかったので、7日から16日まで使って1日ずつ載せました。一度に10個更新したわけですが、ほとんどの項は細かな修正がほとんどで、加筆・増補と言えるようなことをしているのはわず…

現代日本社会研究のための覚え書き――政治/イデオロギー(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――セキュリティ/リスク(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――親密圏/人権(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――共同体/市民社会(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――教育(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――家族(第3版)

連載目次 第1版 第2版

現代日本社会研究のための覚え書き――経済/労働(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――テクノロジー/メディア(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――序論(第2版)

連載目次 第1版

コドモをだませるオトナになろう

パオロ・マッツァリーノ『ほろ苦教育劇場 コドモダマシ』(春秋社、2008) 『反社会学講座』で統計の融通無碍さを実践的に暴露し、『つっこみ力』で学問が果たし得る社会的機能の限定性を説得的に描いた、南関東一の戯作者の新著。登場人物が繰り広げる会話…

現代日本社会研究のための覚え書き――政治/イデオロギー

これで、あとは「ネーション/国家」と総論だけ。ようやく国家論に取り組める。のだが、できれば先に可能な改訂を済ませておきたい。なので、クライマックスはもう少し先になる予定。

現代日本社会研究のための覚え書き――経済/労働

やっぱり経済は粗が見えやすい。色んな人に怒られ/呆れられそうです。あくまでも「覚え書き」であるとのエクスキューズを忘れないようにしましょう、皆さん。いや、むしろ具体的にご教示頂けるのなら、その方がありがたいのですが。

森村進「ジャン・ナーヴソンの契約論的リバタリアニズム」

http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/15899 いつもの森村節で、最初の数頁だけでもなかなか面白いです。

暴力への意志を顕わせよ、さもなければ去れ

ゼロ年代の想像力作者: 宇野常寛出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/07/25メディア: ハードカバー購入: 41人 クリック: 1,089回この商品を含むブログ (263件) を見る 宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(早川書房、2008年)。あまり期待していなかったのだが…

後藤和智さんの言説について、最後に

おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)作者: 後藤和智出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/09/10メディア: 新書購入: 9人 クリック: 334回この商品を含むブログ (74件) を見る 後藤和智『おまえが若者を語るな!』を読みまし…

現代日本社会研究のための覚え書き――序論

何の因果か、「宮台チルドレン」呼ばわりされたことがあるのですが、宮台の著作をこれだけ読み込んだのは今回が初めてですよ。だいたい、私が初めて宮台に触れたのは仲正との対談本ですから、同世代の中でも宮台受容は遅いはずです(全く受容していない人は…