コドモをだませるオトナになろう


パオロ・マッツァリーノ『ほろ苦教育劇場 コドモダマシ』(春秋社、2008)


反社会学講座』で統計の融通無碍さを実践的に暴露し、『つっこみ力』で学問が果たし得る社会的機能の限定性を説得的に描いた、南関東一の戯作者の新著。登場人物が繰り広げる会話や行動に対してト書きの役割を担う著者が突っ込みを入れていくという形式で物語が進み、勝ち組サラリーマンのお父さんが、テレビコメンテーターを志す息子が繰り出すこまっしゃくれた質問に統計や歴史的事実を動員して答え、こじつけや発想の転換によって何とか丸めこむ――その傍らで元悪徳地方公務員のおじいちゃんが傍若無人な活躍を見せる――という流れが基本。話題に上るテーマは多種多様で、一話毎に関連する書籍(元ネタ)が紹介されるのだが、その引き出しの多さには感心させられる。いつも通り流暢でユニークがたっぷりの文章もさることながら、「そういう考え方もあるか」と思わせる着眼点の尖鋭さも流石。自称・戯作者に最も相応しい形式が採用されたこともあり、著者の真骨頂が発揮されており、内容は折り紙が付いている。顔をほころばせつつ目からウロコを落とせるという極めてお得な一品。世の父親諸兄は、一見深そうだが実は大した事を言っていない内田樹の著書を熱心に買い集めているよりは、さくさく読めるのに実は結構深いことを言っている本書を読んで、「モンスターチルドレン」をだまくらかす術を磨き直すべきだろう。


コドモダマシ―ほろ苦教育劇場

コドモダマシ―ほろ苦教育劇場