2009-01-01から1年間の記事一覧

読売のエゴイスト

無頼記者、戦後日本を撃つ―1945・巴里より「敵前上陸」作者: 松尾邦之助,大澤正道出版社/メーカー: 社会評論社発売日: 2006/04メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 松尾邦之助という人は、戦前は読売新聞特派員としてパリ支局…

幽霊と亡霊と

ソファの在る書店にて、3時間近くかけて以下の主に1、4、5章を読む。 マルクスの亡霊たち―負債状況=国家、喪の作業、新しいインターナショナル作者: ジャック・デリダ,増田一夫出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2007/09/25メディア: 単行本購入: 1人 クリッ…

よい・良い・善い

倫理とは何か―猫のアインジヒトの挑戦 (哲学教科書シリーズ)作者: 永井均出版社/メーカー: 産業図書発売日: 2003/02/01メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 63回この商品を含むブログ (43件) を見る 諸事情により、再読。これはまぁ、制度的な意味での倫理…

倫理学には入門する価値があるか

動物からの倫理学入門作者: 伊勢田哲治出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2008/11/20メディア: 単行本購入: 16人 クリック: 209回この商品を含むブログ (54件) を見る 科学哲学の啓蒙書や論理的思考の指南書などで好評を得ている著者が*1、「なぜ動…

社会の個人化と個人の断片化

よく知らないのだが、最近twitterなるものの存在が目に入ることが多くなった。思い付いたことを思い付いた時に書き込んでいくものであり、ブログをより刹那的にしたものだと捉えてよいだろうか。こういうツールは、素朴に見て、個人の通時的流動性(すなわち…

デリダ派的シュティルナー再解釈?

シュティルナー関連で、とりあえずダウンロードしてあった数点をつまみ読む。その中の一つである書評、Tracy B. Strong,“Fiction Knows No Noumenon”,Political Theory,April 2007,Vol.35,No.2,pp.223-230で採り上げられている、Susan McManus,Fictive Theor…

日米同盟の正体

日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)作者: 孫崎享出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/03/19メディア: 新書購入: 7人 クリック: 174回この商品を含むブログ (58件) を見る 著者は外務省で駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を…

情況と理想

情況 2009年 06月号 [雑誌]出版社/メーカー: 情況出版発売日: 2009/05/29メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 『情況』の最新号に千坂恭二という方がシュティルナーについて書いています。これは、いわゆる「マルクスとシュティルナー」が語ら…

精神障害者をどう裁くか

精神障害者をどう裁くか (光文社新書)作者: 岩波明出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/04/17メディア: 新書購入: 3人 クリック: 169回この商品を含むブログ (37件) を見る 良書である。既に多数の著作を持つ現役の精神科医が、とりわけ法に触れた精神障害…

国会議員の世襲制限に関する憲法学的考察

まず、世襲制限が憲法で認められている職業選択の自由を侵すために不可能であるとの議論があるが、これは正しくない。職業選択の自由とは、個人が自らの就職・転職・退職を決定し、選択した職業を遂行するにあたって、国家の規制を受けないことを意味する。…

リスクと不確実性について

少し前の話になるが、kaikajiさんとBaatarismさんの以下のやりとりに触発されて考えたことをまとめておく。 経済学的思考のすすめ@梶ピエールの備忘録。 テポドンの経済学@Baatarismの溜息通信 BMDを棄つるの覚悟@梶ピエールの備忘録。 国際関係における…

雇用関連の議論のもつれ

城繁幸さんのブログでコメントして、あしらわれました。http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/3c7fcecc268aa717e93700cbb43146fc森永卓郎の主張に整合性が無いとする理由がよく解らないのですが、私所詮素人なので深追いは止めておきます。それにしても雇用問題…

最近のアナーキズム周りについて

最近書店を歩くと、チョムスキーやグレーバーのアナーキズム論の翻訳が並んでいたり、「新しいアナキズム」が云々などという本まで売られていたりします。チョムスキーの「アナキズム論」作者: ノームチョムスキー,木下ちがや出版社/メーカー: 明石書店発売…

かかわりあいの政治学7――相続はなぜ認められるのか

承前。 相続はなぜ認められるのだろうか。ある人の連れ合いや子どもであることが、その人の死後に財産を無条件で譲り受ける権利を発生させるのは、なぜなのだろうか。相続については、相続税をもっと引き上げて――場合によっては100%にして――所得再分配に活…

かかわりあいの政治学6――時効はなぜあるのか

承前。 近年、刑事上の公訴時効制度について、その存在理由を疑問視する声が高まってきている。同制度については、犯罪被害者遺族の感情への配慮や捜査技術の発達などを背景として、2004年に公訴時効期間を延長する内容の法改正が行われたばかりである。それ…

正しいのはオレだ

例えば音楽で世界を変えようとすることは、愚かなことだろうか。「愛と平和」と叫んで暴力を止めようとすることは、馬鹿げているだろうか。本気で世界を変えようとしている人は馬鹿と呼ばれても別に何も思わないだろうが、実際のところ馬鹿でもなんでもない…

政治資金関連制度について

小沢事件があり、どう考えたらよいかということで勉強しなければと思い、とりあえずウェブで読める論文を物色中。その中から、とりあえず以下を備忘に録しておく。 北野弘久「政治献金の課税と国民の参政権」『早稲田法学』第55巻第1号、1980年3月 著者は租…

かかわりあいの政治学5――臓器は誰のものなのか

承前。 日本において、脳死者からの臓器提供は少なく、1997年10月から2009年3月まで81件(2)である。脳死提供者数は年間最大でも13名という状況である一方で、待機者は2009年3月31日現在、約12,400名(3)おり、国内での脳死者からの提供だけでは待機患者への移…

いじめの構造

いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)作者: 内藤朝雄出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/03/19メディア: 新書購入: 37人 クリック: 550回この商品を含むブログ (71件) を見る なぜいじめが起こり、エスカレートするのかについてのメカニ…

リスク社会における公共的決定

ブログという場の性質上、無粋と思いつつも言っておくと、前のエントリは、その前の「投票自由論」や「利害対立と民主主義モデル」の補足としての意味を込めています。そうするお暇がある方は、そのことを念頭に置いてそれぞれをお読みになって下さい。前の…

世界を変えることはできますか?――社会科学的説教ないし説教的社会科学入門

10代の少年少女にふと、「世界を変えることはできますか?」と尋ねられたとして、私ならどう答えるか――。 「できるかできないを訊くな。今の君には、そんなことを考える必要は無い。本当に世界を変えたいなら、まず何をどう変えたいのかを考えることだ。何で…

御用学者だっていいじゃない

あまり大した話ではないが、ダイヤモンド・オンラインで上久保誠人という人が書いている「官僚支配を終わらせるために、 政策立案で幅利かす「御用学者」を一掃せよ」という記事について、気になったことを簡単に書いておく。執筆者は「官僚の設定する「議題…

利害対立と民主主義モデル

吉原直毅「最近思う事:湯浅誠・堤未果『正社員が没落する--貧困スパイラルを止めろ!』(角川新書)を読んで」を読んで、「分断統治」という観点は確かに重要であるとしても、正規・非正規ないし中間層・低所得層という対立軸だけでなく、世代間の対立について…

投票自由論――選挙など行っても行かなくてもいい

昔、「選挙へのエゴイズムの見解(試論)」というものを書いた。次の衆議院議員選挙がいつになるのか分からないが、選挙における有権者の行為/不行為に伴う責任について、改めてまとめた確定版を書いておきたい。 デモクラシーの精神に忠実であることを自負…

刑法39条について

もう2年半も前のことになるようだが、過去に「刑法39条を擁護してみる」というエントリで、触法精神障害者に対する刑罰の減免を定めた刑法39条への批判論をやや詳細に検討したことがあった。そこでの私の結論は、保安処分的拘束の問題性を避けるためには、…

「国策捜査」の意味

検察が小沢の首を獲るべく動いたことが「国策捜査」であることは否定できない。しかし、それは検察が政府の意を汲んだということであるとは思えない。そうではなく、「国民代表」である検察が、国民の――より正確に言えば「人民」の――「民意」を汲んだ(ある…

10代のための「民主主義とは何か」

こんにちは。いきなりで申し訳ありませんが、これから民主主義の意味について話すことにします。決して短くはありませんが、あなたが民主主義について知りたいのなら、役に立てるはずです。ただし、ここでは10代のみなさんに向けて話すことにしますから、ど…

stakeholder democracyへ

最近ますます社会評論への関心が衰え、政治学を勉強し直したくなっているのですが、そんなこともあって自分のために少し整理。長過ぎて自分でも読みなおすのがしんどいので、「現代日本社会研究のための覚え書き――結論と展望」からstakeholder democracyのと…

社会科学の禁欲と跳躍

本書の実証性に疑問を挟む研究者がいるかもしれない。大胆な分析と解釈を含むからである。きわどいいい方をすれば、厳密な分析が意義深い知見を生むとは限らない。どのような「事実」を発見しようとし、それをどんな「文脈」にのせて議論するか。この社会を…

政策決定過程を「漂白」化しようとする欲望

岸博幸という人が、ダイヤモンド・オンラインの記事で以下のようなことを述べている。 第二の問題は、オリックスの宮内会長が規制改革会議の議長だったことを以てオリックスの入札を否定するならば、政府のすべての審議会について同様の見地からメスを入れる…