2010年にしたこと


少し早いですが、今月はもう書くあてが無いので、2010年最後の記事です。


今年は、以前のブログ記事を改稿した「正義の否定的弁証について」を1月に公表しました。それから、『情況』の3月号に「エゴイズムの思想的定位」と題するシュティルナーについての論文を載せてもらいました。これはその後、補完役割を果たす長めの文章とともに、HPにアップしています

これらは基本的に前から書きためておいたものです。新しく書いたものとしては、9月に「確率・亡霊・唯一者」という論文を公開しました。執筆時期は6月で、ブログに分割して載せた後、HPにファイルを置くという新しい試みをしてみました。同じ9月には、『政策空間』さんに、「ステークホルダー・デモクラシーの可能性」と題する小論を書かせて頂きました。これは9月後半に執筆して、すぐアップされたのだったと思います。

あとは7月から9月前半にかけて書いたものがあるのですが、それは今のところどうなるかわかりません。他に、某所で2回ほど報告をさせて頂く機会(学会・研究会とかじゃないです)もあり、全体として、自分が今後どういう研究をしていくのかについて考える時間を多く持った1年だったと思います。


HPの方を見て頂ければわかるのですが、ウェブに掲載した論文が多くなってきました。どれも媒体に載ったものではないですが、私としては、エゴイズムの政治「理論」に向かう前提となるエゴイズムの政治「思想」については、これら(情況論文+倫理論文・神学論文・自由論文・亡霊論文)で既にかなりの部分を示せ得たのではないかと思っています。細かい部分で色々と詰めるべき箇所はあるのですが、エゴイズムの基本的な姿勢やアイデアは概ね語っており、あとは全体をブラッシュアップしながらまとめる作業が必要だろうと考えているところです(いつになるかわかりませんが)。

まぁ、そういうやくざな文章とは別に、シュティルナーステークホルダーについての地道な仕事も徐々にしていこうと思っているので、その辺は気長に見て頂ければと思います。今後は、広げた風呂敷をきちんとまとめ上げられるように堅気な作業に注力するつもりでいます。


ブログに関して言えば、前々から望んでいる書評中心への移行は今年も叶いませんでした。それでも、宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』三浦信孝編『自由論の討議空間』のそれぞれについて、比較的早い時期にまとまったエントリを書けたのは良かったかな、と思います。

〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書)

〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書)

自由論の討議空間―フランス・リベラリズムの系譜

自由論の討議空間―フランス・リベラリズムの系譜


あと、LJP(リバタリアニズム・ジャパン・プロジェクト)のサイトがオープンしたこともあり、その動きに引っ張られる形で、リバタリアンアナーキーに関する記事を結構書いたな、と(1, 2, 3)。また、現実政治の動きもあり、熟議づいてもいたな、と(1, 2)。

なぜかは分からないですけど、BLOGOSさんにも記事が(選択的にではありますが)転載されるようになったこともあり、ブログの方向性を今後どうして行くかは少し考えました。その辺の意識の在り方は、まぁ昨年の後半辺りから多少現れている部分はあったと思うのですが、今年になってより明確になっているはずです。

確か東浩紀さんが朝日新聞の「論壇時評」を始めたことも考えるきっかけになったと記憶しているのですが、その後に考えは多少揺れまして、「ブログ論壇」的なものにコミットすることはしないけれども、自分のできる範囲で他の人があまりしないような部分を拾っていくことはしていいかな、と今現在思っているところです(例えば)。

まぁ、あんまり深く考えずにやって、書評、研究関係のメモ・告知・紹介など、やや社会的(?)な発言や問題提起みたいなの、が3分の1ずつ位の配分になればいいかなぁ、という感じに思っています。社会に対して言いたいこと、みたいなのは「エゴイズムの政治思想」として一応世に出したので、結構あんまりもう、コアの部分ではどうでもよかったりするんですけど*1twitterとの使い分けや合わせ技なんかもできるようになったので、まぁ今後もしょぼしょぼと続けていくつもりです。


ブログと関連して、今年一番大きかった変化は、twitterのアクティブユーザーになったことでしょうね。『政策空間』さんに書かせて頂いたのも、twitter経由でした。

そこから見える景色も広がった。かねてネット上での政治学者のプレゼンスの小ささを嘆いておりましたが、今年に入ってその状況が変わってきたことは、何度かお伝えしている通りです(1, 2)。ネット全体で見て、どこまで変化があったのかは分かりませんが、現在では菅原琢先生と斉藤淳先生を中心に、シノドスジャーナルなどとの関係もありつつ、少なくない政治学者の方々からの発信が日々積極的に為されるようになっています。少なくとも絶対的には、政治学者のプレゼンスは拡大していると思います。

プラス、自分と同世代以下の人の姿が、よく見えるようになりました。ブログの在り方云々というのは、その辺も影響してます。焦るとか、そういうことではないのですが、いつまでも同じことをやっているわけにはいかないので。「ちゃんと進歩していますよ」ということを、自分にも他人様にもハッキリと示せるように、来年以降も頑張って行けたらと思います。よいお年を。

*1:良い意味で。