リバタリアニズムとは何か
最近、NHKで放送されているマイケル・サンデル氏の講義と、それに並行した宮台真司氏の「解説」によって、リバタリアニズムへの関心が一部で高まっているように見えます(見えるだけかもしれません)。
- 「【追補しました】リベラリズム・コミュニタリアニズム・リバタリアニズムについてのtwitterまとめです」@MIYADAI.com Blog
- 「米国におけるリベラリズムとリバタリアニズムのルーツ」@MIYADAI.com Blog
上のように展開されている宮台説を総合的に検討することは私の手に余りますが、サンデル講義や宮台氏のtweetを経由してリバタリアニズムに興味を持った人に本やサイトを紹介することぐらいはできますので、以下ではそれをします。
リバタリアニズムの入門書としては、森村進『自由はどこまで可能か』が既に定番になっていると思います。2001年に出た本ですが、比較的最近にfinalventさんが紹介されています。
自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)
- 作者: 森村進
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/02/20
- メディア: 新書
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森村氏は日本におけるリバタリアニズムの最大の紹介者であり、同時にリバタリアンとしての自身の理論も積極的に展開してきた法哲学者です。氏が編集した『リバタリアニズム読本』は、「小事典風」のキーワード解説と文献解説を中心として、多彩な執筆者が政治から文化まで及ぶ広い視野でリバタリアニズムを論じており、関心の向きには必携の書だと言えます。
- 作者: 森村進
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 単行本
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日本語で読めるリバタリアニズム入門としてはこの2冊が基本と考えてよいですが、海外文献の邦訳書として1冊挙げるなら、ノーマン・バリー『自由の正当性』になるでしょう。ただし、こちらは上記2冊に比べると若干難しいです。
- 作者: ノーマン・バリー,足立幸男
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 単行本
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また、宮台氏が盛んに言及する「アメリカという文脈におけるリバタリアニズム」について考えるためには、「戦後アメリカの政治思想」で言及した3冊があり、他の思想的立場との関係を知る事もできて有用でしょう。
森村氏以外のリバタリアンな研究者としては、『読本』の執筆者であるディヴィッド・アスキュー、鳥澤円、橋本祐子、山田千代子の各氏が比較的多くを書いていると思います。4氏はいずれも法哲学を専門としており、ロバート・ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』の訳者として知られる嶋津格氏も含め、日本におけるリバタリアニズムの「主戦場」が長く法哲学界であったことは知られておいてよいことです。2004年度の日本法哲学会大会は、「リバタリアニズムと法理論」をテーマとして行われています。
同様に『読本』の執筆メンバーから、「シノドス」アドバイザーの橋本努氏のサイトや、リバタリアン小説家として有名なアイン・ランドの訳者である藤森かよこ氏のサイトも挙げておきます。
他にリバタリアン(的)な研究者として私が思いつくところでは憲法学者の阪本昌成氏、経済学者の竹内靖雄氏などを挙げられますが、最近では蔵研也氏が目立つところでしょう。日本でリバタリアニズムへのコミットを明確に表明した上で積極的に言論を展開している研究者としては長く森村氏が代表でしたから、経済学者の蔵氏が登場したことは1つの画期になったと思います。氏のサイトでは、著書「国家は、いらない」「無政府社会の法と進化」の原稿を読むことができます。
しかし、制度的なアカデミズムの世界ばかりでは完結しないのが思想というものです。学者の書いたものに限らず、ウェブ上では明晰なリバタリアンの方々の手になる文章が存在しています(特にウェブ上では、経済学的観点からリバタリアニズムを展開した議論を多く読むことができます)。そこで以下の通り、私の知るリバタリアンなブログを5つ紹介させて頂きます。
「日本を代表するリバタリアン・ブログ」です。著者のkyuuriさんは日本語圏ウェブにおけるリバタリアンの指導的地位にある、と私は理解しております。
リバタリアニズムの中でも一番「過激」なアナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)の立場から書かれているブログです。海外のリバタリアン、アナルコ・キャピタリストが書いたものの翻訳なども読むことができて、便利です。
「gated communityとリバタリアニズム」で紹介させてもらったブログと同じ方が書いています(当時のブログはもう消えています)。ソリッドかつドライかつシャープな文体に、「月面軟着陸」時代から、私はファンです。
「旧字旧かな」で書かれているので決してとっつきやすいとは言えませんが、リバタリアニズムの考え方について詳しく解説されており、勉強になります。
リバタリアンの視点から各政党・政治家をウォッチする記事なども多く、現実政治とのかかわりを強く意識している点が他のブログと比べた特徴かと思います。著者のtypeAさんには、twitter上でも相手してもらっております(例えば)。
- 作者: ロバート・ノージック,嶋津格
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 1995/01/01
- メディア: 単行本
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- 作者: マリーロスバード,Murray Newton Rothbard,森村進,鳥沢円,森村たまき
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 単行本
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- 作者: デイヴィドフリードマン,David Friedman,森村進,高津融男,関良徳,橋本祐子
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 単行本
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