まぁまぁ。


2005/08/02(火) 15:16:37 http://awarm.blog4.fc2.com/blog-entry-113.html

帰省前最後の更新ということで。
rorygallagherさんから頂いたトラックバックも検討したいところではあるが、やっぱりまだまだ自分の考えもクリアになっていない気がしてきたので、とりあえず感謝だけしてコメントは控えておく。


で、おおや先生の「おいおい。」の方にコメントしとこうかなと思う。


とりあえず前半は問題ないかなと思うのだが、後半部、穏健派/過激派などについてへの酒井氏批判のロジックはいま一つしっくりこない。


まず明白なところから指摘すると、最後にイスラム過激派とナチスを類比して扱っているのは不適当でしょう。
現実に、過激派に対して多数派がある程度の共感を持っている状況が広く存在していることは否定できないとしても、ナチスが政権を握るためには一定数の「おじいちゃん」達の支持が不可欠であった一方、過激派は必ずしも多数派の支持と共感を背景に持たなくとも「一定の行動」を起こすことは可能である。「社会の中で孤立し排除される」状況にあってもテロを起こすことはなんら不可能ではない。
アルカイダを生み出し、支えてきた社会」というものがあるとして、その責任も問うべきではないか、という問題意識は理解できるが、上記の通り、ナチスの類比ではそのロジックに説得力を増すことは難しい。


しっくりこないもう一つの理由は、「アルカイダを生み出し、支えてきた社会」と「大規模かつ深刻な女性虐待」を許してきたイスラム社会との関係性が明瞭に示されていないから、だろうか。ま、これに関しては池内恵氏の指摘とやらに私が無知であることも一因である。
しかし、酒井氏は「たまたまイスラム教徒に生まれたふつうのイスラム教徒と、主義主張でテロを持ち込む政治活動家は違う」と言っているだけであり、そしてこれは「政治の問題」であり、さらにおおや先生は(上記の通りナチスの類比も役立たずであるので)しっかりとこの論理に反証しているわけでもない以上、酒井氏が「自分の間尺に合わないものを何の根拠もなく排除している」とまで言われる筋合いはないのではないか。


これは件のアナウンサーに尋ねたほうがいいかもしれないが、婚前交渉した女性を焼き殺す習慣があったとして、それとテロがどう結びつくのか。何だか次元の違う話ではないか。
で、おおや先生にしても、イスラム社会に存在し、テロリズムとも深く結び付いているような「無視できない問題」とは何であるのか、全く示してくれないので、何だか当惑してしまう。


それで、過激派と穏健派の区別なんだが、基本的に誤解があるかもしれない。
私もよく読み直して気付いたんだが、酒井氏はイスラム教徒と政治活動家は違うと言っているんであって、おおや先生が解釈しているように穏健派と過激派で区分しているのではない。いわゆる過激派はそもそもイスラムと無関係なんだ、と言っている。
そうは言っても、現実にアルカイダなどのテロリストの大部分がムスリムじゃないか、と考えて、この区別の違いを重視しない向きもあるだろう。その考えもわかるが、でもまぁ記事に沿って批判するなら、それなりに無視できない違いじゃないかなぁ。どんなにイスラム社会に問題があったとしても、それとテロリストの行動とは無関係だ、という方向での解釈も可能だし。


ま、要点は何かと言えば、ふつうのイスラム社会とテロリストとの関係が証明できるか、ということ。酒井氏はイスラムとテロリストが無関係と言っているので、イスラム社会の「無視できない問題」を指摘しただけでは意味が無くて、それとテロリストとの(あるいはテロリストの主義主張との)確かな関係を示さなければ、酒井氏の主張に根拠のない排除が含まれているとまでは言い難いのではないか。
で、「アルカイダを生み出し、支えてきた社会」というものがあるとして、それがイスラムと関わるのかどうかも問われる必要がある。そうした社会の存在自体がイスラムの性質と無関係である可能性はそれなりにあるだろう。多分、酒井氏であれば、そうした社会を生み出したのも英米の政策ではないか、と言いそうな気がする。いや、言わないかもしれないので責任持てないが。


ともかく、おおや先生のエントリでは、イスラム社会に存在する「無視できない問題」が何なのか、その問題がどうテロリズムと関わるのか、少数派(テロリスト)の行動に多数派(イスラム社会)からの支持・共感が本当に必要なのか、実際にそうした支持・共感が存在するのか、これらいずれの点も明示・証明されていない。ゆえに、酒井氏が何かに目をそらし続けている、とまで言える根拠はないんじゃないかと思う。


それではぼちぼち実家帰ります。見送りは要りません。