無様なのはアンタだ


2007/02/10(土) 19:08:27 http://awarm.blog4.fc2.com/blog-entry-321.html

前回のエントリは言うまでもなくhttp://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20070207/p1を受けてのものであったが*1、この時はむしろ自分自身と状況そのものに苛立って書いた。今は稲葉さんに苛立っているので、直接的に書く。


それはhttp://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50760309.html#commentsを読んだからだ。


マッツァリーノ氏は「正しさなんか要らない、ウケがすべてだ」とまではおっしゃっていません。「ウケという餌なしには、正しさという釣り針をのみこんでもらえない」とおっしゃっているだけです。氏にとっても正しさはとても大事です。
このスタンス自体は健全だといえます。問題は氏の信じる正しさが、とてもあやふやなものだ、ということです。一連の批判的エントリはそこに対する突込みに他なりません。


更に野暮なことを申しますと、「あくまでもウケは手段であるはずの文脈ににおいて自己目的化されてしまったウケは、実はそれほど受けない」のです。むしろそれは痛々しい。


Posted by いなば


そもそも小田中さんや稲葉さんは『反社会学講座』を読み間違っているみたいだ。あの本は専門知で世間の迷妄を斬るなんて啓蒙書ではなく、ギャグそのものとして受け取るべきだったのだ。私は当初からそう受け取っていたから、今頃になってそう受け取っていない人が多いことに軽く驚く。あの本はデータを根拠として用いる俗説を、同じようにデータを用いながら覆していくという仕掛けで、そこで読者はデータのトリックというものに気づかされるわけだ(ったはず)。でも、それだけなら同じような本は幾つもある。『反社会学講座』が面白かったのは、単にトークが軽妙だったからだけではなく、ギャグ仕立てで俗説を覆していくその手付きがあまりに巧みなために、もしかしてこれもまたトリックで騙されているんじゃないか、この本自体ギャグでデタラメなんじゃないか、と思わせられるところにあった。そこまでがあの本から読み取れるメッセージだったはずだ。だって、ある人のデータを用いたトリックを別の人がデータを用いて鮮やかに覆したからといって、そこで疑うことを知らずに簡単に納得してブラボーとか言う人は、また同じ手口で騙されるだろう。だから「怖いですね、すごいですね、ではさよならさよなら…」とパオロが立ち去った後に、「あー面白かった、でもあいつの話ホントかよ」と読者が半信半疑で残されるという結果にならなければいけなかった。それがあの本が『反社会学講座』を名乗る理由だ。専門知を使って人をただ納得させるだけなら普通に「社会学講座」になってしまうし、「ウケ」という餌を使いながら最終的には「正しさ」に着地してもらうことだけが目的なら「パオロさんの愉快な社会学講座」でよかった。あれは半ば本気で学問に喧嘩を売っている本だったことが、残念ながらあまり気づかれなかったようである。一般向けだった『反社会学講座』が変に学者先生達に評価されたことによって(局所的にではあれ)決定的な誤解が生じてしまったという意味で、パオロにとっては不幸な結果であったかもしれない。パオロにとっても「正しさ」は確かに大事だろう。でも、同時に自己目的的な「ウケ」も大事にしているはずだ。それは戯作者として当然だ。パオロの一連の著作は一義的にはあくまでもエンターテインメント作品なのである。エンターテインメントに過剰な意味を読み込んで作者を煙たがらせるのは研究者や批評家がよくやる迷惑行為である。それが仕事や趣味ならば別に自由だけれども、それは野暮や無粋と言うより単に見苦しいし、きつい言葉を使えば醜い。アンタはみのもんたかと思う。


痛々しいとかうっせぇよ。ウケ狙いが怖くて及び腰になっているヘタレインテリは黙ってればいいんだ。「ああ……本書自体が「つっこみ力養成演習」になってるよ」なんて嘆息するぐらいなら、的確につっこんで、そして「笑い」に昇華させてみろよ。それをしないでただ切り捨てるということは、自分の「つっこみ力」の無さを露呈しているだけじゃないか(自覚ありますかそうですか)。必死こいてウケ狙ってる奴に対して同じ土俵に立たずに外野から「アイツは終わった」的な発言をするのは本当に醜悪で、軽蔑に値するかもしれない。アンタ、本田さんや内藤さんの発想を「ボケ」として「笑い」へと昇華させてあげられなかったじゃないか。意図や経過はどうあれ、結局相手を追い詰めて味方に引き込み損ねたのじゃなかったかい。あの時、反省の弁を述べていなかったか。パオロに対しては稲葉さんは積極的には絡んでいなかったかもしれなかったけれど、結果だけ見れば同じような有り様で。田中さんとかはどうでもいいけど、稲葉さんはそういう結果でよいのか、と。アンタ、何がしたいんだと。嘆息一つでパオロを切り捨てて遠い目で一服している場合ですか。教養とか啓蒙とか言いながら、「パオロスベッてる」(言ってない)とか、やかましいわ。パオロは田中さんやら飯田さんやらにボコボコにされて確かに「心の傷」を負ったかもしれないし、その経済学批判はダメダメかもしれないけど、自分の「心の傷」を癒すために「人文系中流ヘタレインテリ」(だっけ)なんていう狭いターゲット目指してグダグダ呟くのを生業としているアンタより、よっぽど生産的で世間様のお役に立っていますよ。もちろん別に世間様のお役に立たなきゃいけないわけじゃないし、人には役割分担ってものがあるから皆がパオロみたいなことをする必要はないし、できないと思うけど、少なくとも教養とか啓蒙とか言っている人が簡単に切り捨てていい相手じゃないでしょう。相手は自己目的的な笑いもとりつつ、(たまに間違えるかもしれませんけど?)時々それなりの「正しさ」に着地させてもくれるんだから、むしろ学ばなきゃいけないところが沢山あるだろうし、協力できるように努力すべきじゃないですか(もちろん言うは易しですがね)。教養とか啓蒙とか、ただのポーズで本気じゃないよ、ってことならそれはそれでいいですけども、それならホントに無様だな。言っておくけれども、これは叱責です。批判などではないから反論は許しません。ただ肝に銘じて下さい。以上。


反社会学講座 (ちくま文庫)

反社会学講座 (ちくま文庫)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

コメント

>本田さんや内藤さんの発想を「ボケ」として「笑い」へと昇華させて


ま、そういうこと。ニセ科学信者の「トンデモ」も昇華させてこその啓蒙。昇華のさせ方は、いろいろ
あるかもしれんが


叩いたり、見下したりして悦に入るのが啓蒙ですか?


彼らが『啓蒙だ』って言ってるのは、本人達が自覚してるかどうかはともかく、ネタということで理解してます
2007/02/10(土) 22:31:30 | URL | うま #- [ 編集]


うまがうんこをなすりつけていることからもおわかりかと思いますが。
このようなかたちでパオロさんを援護して誰が喜ぶのか、ということですよ、問題は。
『つっこみ力』は田中さんが「ネタ切れ」と評するごとく、『報告』の二番煎じにしか過ぎません。しかも『報告』がさんざん批判されているのに対して、まともに応じもしないで、基本的に同じことを繰り返す。
正直のところ私はパオロ氏が弾氏やふまの同類に過ぎないのではないか、私は買いかぶっていたのではないか、とがっくり来ているのです。

それでも第一弾の『講座』が名著であることには、いささかも変わりはないのですが。
2007/02/12(月) 10:09:31 | URL | いなば #- [ 編集]


コピ〜ペ
>自分が門外漢である分野に対する信頼
自分が門外漢である分野だと「どの発言の信頼度」は高いのか、
重み付けをするのは難しいでしょう

門外漢である分野に対する、自己の判断力に対する警戒。この
警戒感の中には専門家や専門知と称するものを安易に信用せず、留保することも含まれるのですよ
2007/02/12(月) 11:54:18 | URL | 比ヤング #- [ 編集]


稲葉さん、こんにちわ。トラバを消されていたようなので流石の黙殺かと思っておりましたが、望外のご返答ありがとうございます。

ただ、仰る内容においては納得できかねます。その理由はエントリ上で既に述べた通りです。私の認識からすれば、その「がっくり」感も筋違いに思えます。

「このようなかたちでパオロさんを援護して誰が喜ぶのか」といった切り返し方も、私には不毛に思えてなりません。私が問題にしたかったことはきっと、そういった立ち位置ゲーム的な方面にではなく、稲葉さんの仕事に内在的な部分に関わることでしたから。

まぁ、稲葉さんにとっては文脈をわきまえない的外れな口出しに思えたかもしれませんが、稲葉さんの頭の中のどこかしらに少しでも引っかかりを残せたとしたら、口を出した甲斐はあったのでしょう。

後はつまらない収穫が二点ほど。①「これは叱責だ」というレトリックが無意味だということを証明できたこと、②稲葉さんの悪口を言うと色んな人が楽しそうに集まってくるということ。どちらも自明のことでしたかな。
2007/02/12(月) 17:34:04 | URL | きはむ #- [ 編集]

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気が小さいと、フシギな世界が好きになるんです http://timid-and-bald.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_c532.html


科学的なるものの概念 http://d.hatena.ne.jp/kihamu/20070707/p1