政治思想史を学ぶ意義とは何か


2006/12/09(土) 18:58:49 http://awarm.blog4.fc2.com/blog-entry-301.html

これもレポートからの流用。A4一枚ということで30分ぐらいでパパっと書いたもの。書いた当人としてもつまらんなぁと思う内容だけれども、学部生の皆さんが似たようなテーマのレポートを書く際にテンプレートの一つとしてでも使ってくれれば。細かい点ではいくつか問題があると思う。「思想」をネガティブな形でしか定義づけていないところとか。でも、「思想」のポジティブな形での定義はあまり思いつかない…。あと、「政治」の定義に関してはもう少し詰められるだろうけど、とりあえずこんなもんでいいか、という感じ。イーストンの定義よりはいいんでない?




 現代において政治思想史を学ぶ意義は何であろうか。問いを分解しつつ考えよう。


 政治思想史とは政治思想についての歴史である。それでは、①歴史を学ぶ意義とは何か。歴史を学ぶとは、現代の組織や制度、社会の在り方が成立する過程とその過程に影響を及ぼした人物や事象、考え方について学ぶということであり、ひいては現代を生きる人々の考え方を規定している諸要因について学ぶということでもある。すなわち、現代について考察や分析を行おうとするとき、その前提としての歴史を知っていなければ有意味な成果はほとんど期待できないのであって、歴史を学ぶことには現代を学ぶ前提としての意義が存在すると言える。


 次に、政治思想とは何であろうか。それは政治についての思想である。②政治とは何か。政治とは、ある特定の個人間や集団間における利益の分配や価値の擁護に関わる言語的・物理的・経済的・社会的諸手段を用いた争いと、その暫定的解決の過程を意味する。③思想とは何か。思想とは、一方で哲学ほど概念的・論理的に体系化された思考蓄積ではなく、他方で物理法則や実証的データを用いて立証や反証が可能な経験科学的理論でもない、まとまった思想的営為を言う。したがって、政治思想とは、ある特定の個人間や集団間における利益の分配や価値の擁護に関わる言語的・物理的・経済的・社会的諸手段を用いた争いと、その暫定的解決の過程についての非体系的・非経験科学的思考集積の総称である。


 それでは、④政治思想を学ぶ意義とは何か。政治思想は、形而上学的な議論とも真偽を争う議論とも異質な議論を伴うものであり、政治的テーマに関する人々の意識や行動様式に直接・間接に影響を及ぼす要素として、極めて現実的・具体的な重要性を有している。したがって、現実の政治について考える際の前提として、あるいは変数として、考慮することが不可避的に要請されるべき要素であり、これについて学ぶことは有益である。


 以上から、既に⑤政治思想史を学ぶ意義とは何か、についての答えは明らかである。現代の政治思想について学ぶだけでなく、現代の組織や制度、社会の在り方が成立する過程に影響を及ぼした過去の政治思想やその系譜、および現代の政治思想との関係性などについて学ぶことは、現実政治について考察や分析を加えるにあたっての前提としても間接的な政治的変数把握の一環としても、極めて大きな意義を有しているのである。


 ①と⑤の問いへの答えから、⑥現代において政治思想史を学ぶ意義とは何か、という点についても答えはある程度自明であるが、最後に一点だけを強調して補足しておこう。現代はポスト冷戦期にあって政治的対立軸が不明瞭になっており、特に日本では主要な政党間での差異が非常に見えにくくなっている。こうした状況下において政治思想史を学ぶことは、あるべき政治的対立軸についての洞察を深めるために有益である。