政治

国会議員の世襲制限に関する憲法学的考察

まず、世襲制限が憲法で認められている職業選択の自由を侵すために不可能であるとの議論があるが、これは正しくない。職業選択の自由とは、個人が自らの就職・転職・退職を決定し、選択した職業を遂行するにあたって、国家の規制を受けないことを意味する。…

リスクと不確実性について

少し前の話になるが、kaikajiさんとBaatarismさんの以下のやりとりに触発されて考えたことをまとめておく。 経済学的思考のすすめ@梶ピエールの備忘録。 テポドンの経済学@Baatarismの溜息通信 BMDを棄つるの覚悟@梶ピエールの備忘録。 国際関係における…

正しいのはオレだ

例えば音楽で世界を変えようとすることは、愚かなことだろうか。「愛と平和」と叫んで暴力を止めようとすることは、馬鹿げているだろうか。本気で世界を変えようとしている人は馬鹿と呼ばれても別に何も思わないだろうが、実際のところ馬鹿でもなんでもない…

政治資金関連制度について

小沢事件があり、どう考えたらよいかということで勉強しなければと思い、とりあえずウェブで読める論文を物色中。その中から、とりあえず以下を備忘に録しておく。 北野弘久「政治献金の課税と国民の参政権」『早稲田法学』第55巻第1号、1980年3月 著者は租…

リスク社会における公共的決定

ブログという場の性質上、無粋と思いつつも言っておくと、前のエントリは、その前の「投票自由論」や「利害対立と民主主義モデル」の補足としての意味を込めています。そうするお暇がある方は、そのことを念頭に置いてそれぞれをお読みになって下さい。前の…

御用学者だっていいじゃない

あまり大した話ではないが、ダイヤモンド・オンラインで上久保誠人という人が書いている「官僚支配を終わらせるために、 政策立案で幅利かす「御用学者」を一掃せよ」という記事について、気になったことを簡単に書いておく。執筆者は「官僚の設定する「議題…

利害対立と民主主義モデル

吉原直毅「最近思う事:湯浅誠・堤未果『正社員が没落する--貧困スパイラルを止めろ!』(角川新書)を読んで」を読んで、「分断統治」という観点は確かに重要であるとしても、正規・非正規ないし中間層・低所得層という対立軸だけでなく、世代間の対立について…

投票自由論――選挙など行っても行かなくてもいい

昔、「選挙へのエゴイズムの見解(試論)」というものを書いた。次の衆議院議員選挙がいつになるのか分からないが、選挙における有権者の行為/不行為に伴う責任について、改めてまとめた確定版を書いておきたい。 デモクラシーの精神に忠実であることを自負…

「国策捜査」の意味

検察が小沢の首を獲るべく動いたことが「国策捜査」であることは否定できない。しかし、それは検察が政府の意を汲んだということであるとは思えない。そうではなく、「国民代表」である検察が、国民の――より正確に言えば「人民」の――「民意」を汲んだ(ある…

10代のための「民主主義とは何か」

こんにちは。いきなりで申し訳ありませんが、これから民主主義の意味について話すことにします。決して短くはありませんが、あなたが民主主義について知りたいのなら、役に立てるはずです。ただし、ここでは10代のみなさんに向けて話すことにしますから、ど…

stakeholder democracyへ

最近ますます社会評論への関心が衰え、政治学を勉強し直したくなっているのですが、そんなこともあって自分のために少し整理。長過ぎて自分でも読みなおすのがしんどいので、「現代日本社会研究のための覚え書き――結論と展望」からstakeholder democracyのと…

政策決定過程を「漂白」化しようとする欲望

岸博幸という人が、ダイヤモンド・オンラインの記事で以下のようなことを述べている。 第二の問題は、オリックスの宮内会長が規制改革会議の議長だったことを以てオリックスの入札を否定するならば、政府のすべての審議会について同様の見地からメスを入れる…

左派ナショナリストへの疑問

塩川伸明『民族とネイション』を読了。広範囲に目配りの利いた良書だとは思いますが、全体的に広く浅くという印象で、ほとんど刺激は受けませんでした。著者が専門とする地域での掘り下げがさしてあるわけでもないので、一番有用なのは巻末のブックガイドか…

利害関係とは何か

『思想地図』2号の座談会で、東浩紀が「一人一票」原理についての疑義を提起している。例えば、今や世界中がアメリカなのにアメリカ国民しか大統領を選ぶ権利が無いのはおかしくて、世界中の人々に選挙権が分散されていてもいい。同じように、これこれこうい…

正しい戦争など無い

いかなる暴力も正しくない。戦争は暴力の津波である。だから、この世に正しい戦争など存在しない。正しい戦争の存在を認めないと、暴力の範囲を最低限に抑制すべく規律正しく穏当に遂行された戦争と、無際限の冷酷かつ残虐な行為を伴った戦争とを区別するこ…

保守思想入門

佐伯啓思『自由と民主主義をもうやめる』幻冬舎(幻冬舎新書)、2008年 講演記録の書籍化であり、語り言葉による平易な形で佐伯思想が概観できる内容になっています。論旨にはほとんど賛成できませんが、現今、保守思想や保守主義にはろくな入門書が無いので…

トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

A.トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』(第一巻上下・第二巻上下、松本礼二訳、岩波書店(岩波文庫)、2005/2008年)は、アメリカ論として、デモクラシー論として、社会学作品として、政治学作品として、エッセイとして、眩いほどの名著です。10か月に…

戦後アメリカの政治思想

仲正昌樹『集中講義!アメリカ現代思想――リベラリズムの冒険』日本放送出版協会(NHKブックス)、2008年 会田弘継『追跡・アメリカの思想家たち』新潮社(新潮選書)、2008年 米大統領選イヤーの今年はアメリカにまつわる書籍が多数刊行されたが、今回はその…

現代日本社会研究のための覚え書き――結論と展望

さて、ようやく一応の結論まで辿り着きました。本連載は、ひとまずこれで一区切りにします。「科学/生命」は書いていませんし、まだまだ不足なところを挙げたらきりがないですが、かろうじて大筋の見通しは付けられたと思います。元々1〜2年かけて地道にや…

現代日本社会研究のための覚え書き――ネーション/国家

今回は力作…では別にないですが、少なくともここ1〜2年の間に書き溜めたり書き散らしたりしていたことがまとめてあるので、まぁそれなりに参考にはなるのではないでしょうか。宮台や東の議論との距離を明示したということもありますが、国家については左翼周…

現代日本社会研究のための覚え書き――政治/イデオロギー(第2版)

連載目次 第1版

現代日本社会研究のための覚え書き――政治/イデオロギー

これで、あとは「ネーション/国家」と総論だけ。ようやく国家論に取り組める。のだが、できれば先に可能な改訂を済ませておきたい。なので、クライマックスはもう少し先になる予定。

暴力への意志を顕わせよ、さもなければ去れ

ゼロ年代の想像力作者: 宇野常寛出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/07/25メディア: ハードカバー購入: 41人 クリック: 1,089回この商品を含むブログ (263件) を見る 宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(早川書房、2008年)。あまり期待していなかったのだが…

民主主義の機能における二重性と存在における二重性

データ整理していたら、2年前に書いたレポートを見つけたので、載せてみる(表題はレポートママ)。最近はシリーズもの以外は司法関連の話題が多かったので、久し振りにデモクラシーのネタもいいでしょう。内容的には、これだけでは毒にも薬にもならないよう…

つまんない

黙りたまえ、それが望みならば http://d.hatena.ne.jp/font-da/20080615/1213500136 このレベルでの応答が来てしまった。font-daさんにはmojimojiさんや野崎さんとは少し違った視点があるので、もっと何か別のものを期待していたが、どこかで見たような文言…

暴力とは何か

ところで、暴力的であるとか、暴力性などについて論じるのはいいのだが、こういう議論をしていると一般的な感覚で言う「暴力」の意味との乖離が生じてきて、人文社会科学的な議論への日常的な接触を持たない人にはとっつきづらくなり、コミュニケーションの…

非人格的権力再考

昨日のフォローとして、少し引用。 何はともあれ、間違いのないことは、初期自由主義は、みずからを、個人の神聖さと独立性との擁護を目的とする哲学であると宣言していたことである。ところで、一体誰に対して、個人は擁護されるべきであったのか。こう問い…

田村・東・稲葉、徒然に

熟議の理由―民主主義の政治理論作者: 田村哲樹出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2008/03/25メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 316回この商品を含むブログ (38件) を見る 久し振りに、本屋らしい本屋に行けた。そこで、田村さんの新刊を手に取る。収録論…

東的国家観について

大澤真幸『逆接の民主主義』(角川書店:角川oneテーマ21、2008年)の酷書評を書こうかと思ったのだけれど、それより東浩紀のエントリに触れた方が面白そうだし、生産的な気もするので、そうする。過去のエントリも含めて挙げる。 シンポに向けてのメモ http…

安全と国家

公法研究 2007年 10月号 [雑誌]出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2007/10/12メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 昨日図書館で見かけて、面白い特集していると思ったが、時間が無くてパラパラとしか見られんかった。ので、メモ。「安全の中の自…