政治

フランス自由主義の両義的位置――三浦信孝編『自由論の討議空間』

三浦信孝編『自由論の討議空間――フランス・リベラリズムの系譜』勁草書房、2010年 「フランス自由主義」なる言葉遣いは,聞く人を怪訝にさせるかもしれない.まるでそれは語義矛盾であるかのように,「フランス」と「自由主義」が寄り添って私たちの会話の中に…

リバタリアニズムとは何か

最近、NHKで放送されているマイケル・サンデル氏の講義と、それに並行した宮台真司氏の「解説」によって、リバタリアニズムへの関心が一部で高まっているように見えます(見えるだけかもしれません)。 「【追補しました】リベラリズム・コミュニタリアニズ…

シュティルナー論文2本公開

本日、『情況』3月号に掲載されたマックス・シュティルナーについての論文「エゴイズムの思想的定位――シュティルナー像の再検討」のpdfファイルを私のHPで公開致しました。ご関心の向きは、是非ご一読・ご利用を頂ければ幸いです。また、それと同時に、本論…

憲法の機能をめぐる認識のズレ

憲法記念日であるので憲法をお題に何か書くことにしますが、さして詳論したいと思うことも無いので、あまり指摘されていないと思うことだけを、なるたけ簡潔に話します。 左派的な立場から憲法が論じられるのを見聞きすると、「そもそも憲法とは国家権力を縛…

ポストモダンにおけるデモクラシーの価値――宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』

宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』岩波書店(岩波新書)、2010年 〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書)作者: 宇野重規出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/04/21メディア: 新書購入: 10人 クリック: 174回この商品を含むブログ (63件) を見る 吉田徹…

エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』抜粋

フランス革命についての省察〈上〉 (岩波文庫)作者: エドマンドバーク,Edmund Burke,中野好之出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/07/14メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (21件) を見るフランス革命についての省察〈下〉 (岩…

「熟議に基づく教育政策形成シンポ」傍聴記

4月17日に文部科学省内の講堂で開催された「熟議に基づく教育形成シンポジウム」を傍聴してきましたので、その模様について、気付いたことや個人的な感想を簡単に書き留めておきたいと思います。

「アメリカ化」する日本の政治学

北田暁大氏による最後の編集号となった『思想地図』vol.5には、巻頭の野中広務氏を迎えたシンポジウム記録をはじめとして多数の興味深い論考が掲載されていますが、私がとりわけ広く読まれて欲しいと願うのは、特集の末尾に収められた「「アメリカ化」する日…

リスク社会における公共的決定2――「トンデモ」批判の政治性と政治の未来

今日は少し、色々な文脈を縫い合わせるようなお話をしてみたいと思います。例によって長いですが、ご関心の向きはしばしお付き合い下さい。

つぶやき政治学

1月末のエントリでtwitter利用について書きましたが、その後だいぶ慣れまして、tweetもニュースばっかりじゃなくなってきました。フォローとリストの使い分け方なんかも徐々に上手くなってきた気がします。昔こんなことも書きましたし、実際その内容が妥当だ…

「情報戦時代」の本当の意味――ポスト・ヘゲモニーの時代

「情報戦」などという言葉はチープに響くが、その奥に読み込むことのできる意味は重い。今日は、そういう話をしてみたいと思う。

アレクシス・ド・トクヴィル『旧体制と大革命』抜粋

旧体制と大革命 (ちくま学芸文庫)作者: アレクシス・ドトクヴィル,Alexis de Tocqueville,小山勉出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1998/01/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 32回この商品を含むブログ (25件) を見る 人間がさまざまの出来事を記憶にと…

『ミル自伝』抜粋

ミル自伝 (岩波文庫 白 116-8)作者: ジョン・ステュアート・ミル,朱牟田夏雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1960/02/05メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (13件) を見る 私の父は、私の学ぶいかなることも、それが単に記憶力さ…

政治学のたそがれ?

最近は本を読む機会が減ってネットばかり見ているが、そうすると、この国には政治学者がいないのだろうか、という気になってくる。ネットで目立つのは経済学や社会学、哲学の研究者や批評家・運動家ばかりで、政治学関係の研究者は一様に慎ましい。多少なり…

stakeholder democracyへの道半ば

最近はインプットが僅少なので、まとまったエントリは書けずにいる。近頃考えることについて、ごく散漫な話をしてお茶を濁そう。先頃書いた東浩紀的な「民主主義2.0」の解説としては、「「一般意思2.0」の勘所、あるいは「データベース民主主義」の理論的位…

羽入辰郎『支配と服従の倫理学』

支配と服従の倫理学作者: 羽入辰郎出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2009/03/01メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 143回この商品を含むブログ (9件) を見る 久し振りに大きめの書店をうろつくことができて書棚を物色していると、この本を見つけた…

哲学的想像力と政治学的想像力

東浩紀の議論に絡めて色々書き散らしてきたので、この辺りで一旦整理。国家や民主主義などに直接かかわるものだけ、まとめておく。時系列にする意味はあんまり無いと思うので、改めて載せておきたいところを拾いながら(注は省略)、その結び付きで並べてい…

「一般意思2.0」の勘所、あるいは「データベース民主主義」の理論的位置

私の論文などに興味がある人はごく少数でしょうから、ブログマターに戻って先日の話を続けましょう。デモクラシーについての私の理論的立場は既にお話したので、今回は東的デモクラシー論が持つ可能的意味にグッと焦点を絞りたいと思います。東さんは「朝生…

自由の終焉

ここ最近はデモクラシー関連の記事を続けているが、そろそろ別の話題もどうだろうか。というわけで本日、HPに「自由の終焉――「配慮」による内破と自己性への転回――」と題する論文をアップした。これは(記憶が定かではないので)たぶん昨年末から今年の初め…

ポストモダンが要請する新たな政治パラダイム――Stakeholder Democracyという解

私はリアルタイムで見ていたのですが、昨日の『朝まで生テレビ』に出演した東浩紀さんが、「インターネットがある現代なら、5〜10万人の規模でも直接民主政が可能だ」と力強く語っていました。この発言は、これまで彼が展開してきた一連の議論の延長線上にあ…

政治的敗者は政策過程から退出すべきか――山口二郎論説に寄せて

今週の『週刊東洋経済』(2009年10月24日号(第6229号))に、山口二郎のコラム「党派性を出すことで言論者の責任も明確に」が掲載されている。同記事には社会科学と現実とのかかわりについての山口の認識が顕著に現れているので、多少詳しく採り上げたい。…

吉田徹『二大政党制批判論』

二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ (光文社新書)作者: 吉田徹出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/10/16メディア: 新書購入: 2人 クリック: 54回この商品を含むブログ (31件) を見る 著者の専門はフランス政治。1989年以降の現代日本政治史の歩…

暴力の定義について

http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20091008/p1 「文化的暴力」というのは概念的には半端で、無くてもいいものだと思う。政治的には重要なんだろうが。それにしても、「暴力」の語に反発を覚える人は多い。以下はまず、ご参考までに。 「暴力とは何か」(2008…

政権交代雑感

国内外を問わず、現実政治そのものについて私がオリジナルに語れる有意義なことというのは何も無いので、語らないことにしている。例えば鳩山首相の人事は、小沢幹事長から始まって以来、まずこれ以上は考えにくい配置だと思っていたのだが、そういうことも…

消費者主権政治が政府に要請する二重の課題

「小さな政府と社会保障の両立を求める変な国民」@すなふきんの雑感日記 「小さな政府と社会保障拡大を求める欺瞞」@Economics Lovers Live 「メモ:「小さな政府」、「大きな政府」、「社会保障負担/給付」に関する国民意識」@研究メモ 共通する疑問は、…

政治を巡って今読むべき10冊

http://synodos.livedoor.biz/archives/958940.html こういうのを見ると、自分でも選んでみたくなる。とりあえず、ささーっと本棚を眺めながら思い付いたところをリストアップ。古典は避け、なるたけ新しく、かつ政治との直接的な繋がりが見えやすい本を選び…

総選挙に臨む人へ

いや、驚いた。今週の『鈴木先生』(『漫画アクション』2009年9月1日号、双葉社、2009年8月18日)を読んでいたら、選挙と民主主義について相当突っ込んだ議論が展開されているではないか。あれは政治学の良い教材になりそうだ。総選挙が公示されたので、いず…

各党マニフェストから教育政策を比較する

8月30日の総選挙に臨む各党のマニフェストが出揃ったところで、子育て・教育・科学政策に絞って各党の公約を比較してみたい。資料は以下を用いる(いずれもYushisya.Blogから)。 「教育資料採集・特別版no.1――2009.8.30総選挙マニフェスト(1)自由民主党」 …

政治の可能性を奪う予定調和

選挙の季節は、理論と現実の関係に思いを巡らすのに格好の機会である。今日は、日経新聞の社説の一節を採り上げたい。 首相に批判的な議員の間では、党とは異なる独自の政権公約を掲げて選挙を戦おうとする動きがある。これは政権公約と党首(首相候補)を比…

日米同盟の正体

日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)作者: 孫崎享出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/03/19メディア: 新書購入: 7人 クリック: 174回この商品を含むブログ (58件) を見る 著者は外務省で駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を…